宮崎達博さんのネギ(岐阜県岐阜市)
宮崎さんのネギは、太くて肉厚だけど、やわらかくて甘い
宮崎さんはネギ以外にも小松菜やそら豆、ピーマンなど、たくさんの野菜を栽培しています。ひとくち
に野菜といってもそれぞれ独自の性質を持っていて、それに精通している宮崎さんは野菜博士といってもおかしくないほど知識と経験の豊富な方。かつては農作業中に両足骨折という大事故に遭われたのですが、今では農作業も問題なくできるほど回復されています。
今回、調査対象としたのはネギ。宮崎さんのネギは「太くて肉厚だけれど、やわらかくて甘い」と評判ですが、その秘訣は化学肥料で急いで育てるのではなく、有機肥料でゆっくりと栽培することのようです。例えば小松菜だと1ヵ月ぐらいで収穫できますが、冬に穫れるネギ(冬ネギ)は1年以上もかけて栽培しているのです。1年の間には台風や積雪などさまざまな自然災害があり、それを乗り越えたネギだけが収穫されるのですね。
中国でもネギは穫れるが...
ネギはユリ科ネギ属。日本では10世紀以前に栽培した記録があり、原産地は中国西部です。いま、中国からの輸入野菜がさまざまな波紋を広げていますが、ネギもその1つ。
ただし、一口にネギといってもいろいろな品種・栽培方法があります。中国から日本に輸出されるネギは主に日本向けに栽培したネギ。そのため、タネや農業機械まで日本製です。いくら人件費が日本の10分の1とはいえ、これらの設備を使うことで従来の中国産のネギよりも値段が高くなってしまい、中国国内では売れません。セーフガード(*)をはじめ、何らかの理由で日本が買ってくれなければ、十分なお金がえられず、農家は困ってしまいます。かといって、そのままどんどん輸入していては、日本の農家が困ってしまいます。日中を問わず、国を越えて生産者にとってはリスクの大きい状況が続いています。
*注)...国内の生産者を輸入急増や価格暴落などの緊急事態から保護するため、関税引き上げなどで輸入を抑える措置。WTO(世界貿易機関)加盟国に権利として認められている。
冬ネギは中国産より環境にやさしい?
ネギも地球環境と無縁ではありません。肥料も機械も使います。宮崎さんが栽培した場合は岐阜から運ぶだけですが、中国産だと遠くから運んでくる途中にさまざまな環境負荷を与えます。そこで宮崎さんの栽培方法と、同じ栽培方法で栽培したネギを中国から運んできた場合とで、地球温暖化への影響を比較しました。ただし、夏と冬ではネギの成長速度も収穫量も違うので、2種類に分けています(グラフ参照)。
まず、宮崎さんの栽培方法では肥料による影響が大きいことがわかります。しかし、すでに宮崎さんは害虫がこないようにするために肥料の量さえもできる限り減らしているので、これ以上削減するのは難しいでしょう。
次に、宮崎さんが作る夏ネギと冬ネギを比較すると、だいたい夏ネギは2倍ぐらいの影響があることがわかります。これは冬ネギのほうが収穫量が多いためです。ネギは冬に食べるのが環境負荷の少ない食生活といえるでしょう。
一方、中国産ではどうでしょうか。たとえ栽培方法が同じでも、輸送時の影響が大きいことがわかります。船便を使って日本海を渡ってくる時に、重油を使っているからです。宮崎さんのネギと比較すると、夏ネギだと約1.5倍、冬ネギだと約2倍の影響が出ていることがわかります。宮崎さんのネギを選ぶことは、地球温暖化の観点からも意義があるといえるでしょう。
農薬とナメクジのイス取りゲーム
「よく野菜にナメクジがいると苦情を受ける。それなら農薬を使ってナメクジをなくしたほうがいいのか、それとも少々ナメクジがいても無農薬がいいのか、悩むことが多い」と宮崎さんはおっしゃいます。現在でも、ナメクジの出やすい雨降りの時は出荷を避けたり、選別作業時に注意して抜き取るなどさまざまな工夫は凝らしているものの、雨の多い梅雨時期はどうしてもナメクジが潜入してしまいます。そのため、中には出荷直前に農薬を散布する農家もあるようですが、ナメクジこそいないものの農薬が付着した野菜が出荷されるおそれがあります。残留性の低い農薬もありますが、それは揮発性が高く、散布する農家の方が頭痛や肝臓を悪くすることもあるそうです。
少し話がそれますが、農薬についてもう少し続けます。岐阜特産・枝豆の場合、ふつう1週間に1回は散布しますが、お盆の後からは3日に1回となります。10月が一番値段が高く販売できるのですが、その頃の枝豆は15回~20回農薬を散布されることになります。もし農薬を使わないと、ナメクジやアブラムシなど害虫に食べられてしまい、出荷できないか、安くしか出荷できません。
宮崎さんは「農薬を使ったら"きれい"なものが簡単に作れる。1本1,000円の農薬を、10分で散布して終わり。しかし、私は無農薬を続けていきたい。やれるだけやっていきたい」。今後もできる限りは虫のつかない栽培方法にチャレンジしていくとのことですから、応援していきましょう。そのためには少しの虫はどうしてもガマンするしかなさそうです。それでも生理的にガマンできない方は、畑や田んぼの体験ツアーに参加して、楽しんでいる間に自然に虫と仲良くなるのが一番の早道かもしれません。








