中家農園のトマト(岐阜県高山市)
中家さんの畑がある岐阜県丹生川村は、深い山に囲まれた静かで豊かな自然と古い歴史ある村。このあたりでは1mほどの積雪を記録することもありますが、名古屋や関西地方の食卓にトマトやホウレンソウをたくさん出荷する一大生産地です。
中家さんの夏トマトは、暑い日差しをたっぷり浴びて真っ赤に熟し、甘みも酸味もあるのが特長。毎年無農薬栽培を目標に堆肥や肥料の量を調整し、水分や温度管理にも気を使っています。
安全なものづくりがしたい
「自分にも、買ってくれる人にも安全なものを作りたかった」という中家さんは、お父さんの跡を継いで農業に携わり今年(平成14年)で15年め。見てくれは悪くても味を大切にしたいという思いから、有機農法を導入しました。ひとくちに有機農法といっても、いろいろな方法があるので、どれが良いのか迷った時期もあったとか。今も作物の成長に合わせて堆肥を変えたり、土の成分を分析するなど、より良いものづくりを目指して工夫を重ねています。
昨年は新しい試みとして「ミネラル1.5倍」トマトを目指した栽培方法に挑戦。2002年の今年は気温が例年に比べて高く、上手に栽培するには特に気配りが必要ですが、今年も生育状況はよく、夏にはおいしいトマトが期待できそうです。(ちなみにミネラル栽培の結果は、第5訂日本食品成分表の1.02倍)
こだわりの作物を育てるとコストもかかりそうですが、中家さんはこういいます。
「お金をかけても悪いものは悪い、安くても良いものは良い。なるべく安くできる方法で、しかも栄養価の高いものを作ろうと、ここ2~3年は特に意識して取り組んでいます」
たとえば堆肥は自分で作り、肥料代の節約をしています。しかし、堆肥の原料は安ければ何でもいいというわけではなく、牛ふんは信頼のおける近所の牧場から、植物チップは近くの漢方薬工場から絞りかすを調達しています。また、雨除けハウスのビニールを何年も使うなど、トマトを少しでも安く生産しようと工夫をされています。
夏のトマトと冬のトマト、その差はなんと20倍!
丹生川村は雪が多く、冬は農業ができません。このため、中家さんのトマトは一年一作。春が近づくと苗の準備にかかり、収穫は6月末から10月末頃まで。雨よけのハウスの中ではありますが、太陽の陽射しをしっかり浴びて育つトマトは、甘味も栄養もたっぷり詰まっています。一方、冬や春に出回るトマトは、自然な気候のままでは育たないため、しっかり暖房で温める加温栽培がおこなわれます。
中家さんの夏トマトを、もし冬にも生産したら、環境負荷にどのくらいの差が出るでしょうか?
中家さんの夏トマトと、同じ手法に暖房を加えた加温トマトの、地球温暖化ガス排出量を比べてみました。その結果、加温トマトは夏トマトに比べて、地球温暖化への影響はなんと20倍(グラフ参照)。原因はもちろんハウスを暖めるために燃やした灯油です。季節はずれのトマトがいかに環境に負荷を与えるのかがわかりますね。計算によれば、加温トマトを10kg生産するためには、30kgの二酸化炭素を排出することになります。中家さんの夏トマトのように自然の力を上手に利用して育てた旬の野菜を食べることは、温暖化防止につながるのです。
旬の野菜が環境にも身体にもやさしいというのは、エコクッキングの常識。ちなみに別の調査によると、他の夏野菜で旬のものと冬の加温栽培のものを比較した場合、ナスで4.5倍、キュウリが5倍、ピーマンで10倍の差があるというデータもあります。もちろん栄養価の違いも見逃せません。
収穫から乾燥まで
安全で、環境負荷の低い農業を実践している中家さん。しかし「有機栽培というだけで安全だ、環境にやさしい、とは言いきれないことを知ってほしい」と強調します。
たとえば有機野菜に不可欠の堆肥。一口に堆肥といっても、その原料は様々です。中家さんが作っているこだわりの堆肥もあれば、木材の腐り防止やシロアリ駆除のための危険な化学物質を含んだ建材を「リサイクル」して作った堆肥もあります。もしこうした堆肥を使えば、栽培方法に問題がなくても安全な野菜ができるとは限りません。有機農法だからといって手法を勘だけに頼るのは、目に見えない危険性を見落とす可能性があると中家さんは言います。だからこそ、きちんとした分析とそれを見分けられる知識と見る目が、生産者にも消費者にも必要になってきます。
「そのあたりは、うちはちゃんと調べてあるんでね。安全な原料かどうかも専門家に頼んできちんと分析していますから、自信を持って提供できます。今の段階で僕ができる安全への対策はやってるつもりです。せっかく作物を作るのですから」
今後も、より信頼できる食べものを手に入れるために、私たち消費者は栽培の過程にも注目していく必要があるでしょう。








