天野グループの畑(愛知県安城市)
環境へのやさしさを計る「ものさし」としては、LCA(ライフサイクルアセスメント)」を採用しました。これは一つの製品が、原料を採取してから廃棄されるまでの生涯(ライフサイクル)において、環境へ与える影響を評価(アセスメント)することです。
「やさしさ」を計る対象としては、水、空気、土壌汚染など多くの種類があり、すべてを調べるのは困難です。そこで今回は「地球温暖化への影響」に絞って、農業と地球環境について具体的な数値を調べ評価しました。
有機無農薬は難しい
愛知県安城市は、「日本のデンマーク」と呼ばれたほど有畜複合農業の盛んなところ。岡崎平野のほぼ中心に位置しており、どこまでも続く田んぼと畑の風景が心を和ませてくれます。『天野グループ』は、天野道子さん・天野ナエ子さん・天野たき子さんの女性3人グループ。通称"にんじんCLUBのキャンディーズ"(平均年齢66歳)と呼ばれているそうで、その元気さには脱帽させられます。ちなみに同じ天野姓ですが、血縁関係ではありません。どうやらこの集落には、"天野さん"が多くいらっしゃるようです。
『天野グループ』の畑には、みずみずしいオレンジ色のにんじんや大根、ナス、ピーマン、菜っ葉類などが元気に育っています。15年ほど前に発酵堆肥の話を聞いたことがきっかけで、無農薬無化成栽培に切り替えました。
「当初はやっぱり大変で、特に虫には手を焼きました。日本は土地が狭いので畑が小さく、他の畑から虫が飛んでくることもあるので、年に1~2回は殺虫をすることがあります。有機栽培にするのは本当に大変だと思います」
それでも有機低農薬栽培にこだわるのはなぜでしょうか?ナエ子さんは、「普通の店で売っているのに比べて、おいしいし、ミネラルも豊富だし、健康にもいいから。孫はこのニンジンなら食べられると言ってくれる」と教えてくれました。また、たき子さんは「ハダ(ニンジンの表面)が違う」ともおっしゃっていました。ハダが良くなるどんな秘訣があるのでしょうか。
地球温暖化とニンジン
『天野グループ』は臭化メチルを使わないことでオゾン層保護に一役買っているといえますが、では地球温暖化についてはどうでしょう?現在の『天野グループ』の農法と、もし化学肥料と農薬を使った場合について比較しました。ただし、収穫時期によって条件が変わるので、春どりと秋どりの場合に限定。調査対象は、畑で使った堆肥や肥料、機械、資材です。
すると、春どり・秋どりとも、化学肥料と農薬を慣行栽培と同じように使うと、地球温暖化への影響が2倍以上になることがわかりました。原因は農薬の製造によるもの。春どりと秋どりで差があるのは、収穫量が違うからです。
また、グラフでは資材の製造による影響がほとんどありませんが、これは農業資材を何度も再利用しているからです。このデータから、現在の『天野グループ』の栽培方法はかなり地球温暖化防止にも意味があるといえます。
もっと農業を大切にして欲しい
道子さんは、「地球がダメになったら人間もダメになる。だから地球にやさしくしないといけない」とおっしゃいます。そのためには、工業ばかりでなく農業をもっと大切にする必要があります。しかし現実は、年々農地が減っており、農業に携わる方も減っています。『天野グループ』でも問題は同じ。
「私たちが無農薬栽培を始めた頃は40代でしたが、自分たちより若い世代では農業そのものをやる人がいないので、まわりは高齢の人ばかり。だから、わざわざ大変な無農薬栽培に変える人はいませんね。私たちも、ここまで土づくりしたものの、引き継ぐ人がいません。でもうれしいことに、最近は都市部の若い人たちで農業に関心のある人たちが増えてきた。そういう若い人たちにこれからを担って欲しいですね」
外見だけで判断しないで!
このように『天野グループ』はいろいろ努力していますが、残念ながら一般の市場では評価されないそうです。市場で評価されるのは味や環境性よりも「見栄え」。そしていろいろな農薬を使ったほうが見栄えは良くなるので、ほとんどの生産者は農薬を使っているそうです。私たち消費者が知らず知らずのうちに選んできた結果が、こうなってるのですね。もう少し賢くなって中身や背景まで考えるようになったら、作る側も食べる側も、お互いに喜べるのではないでしょうか。農薬を使う生産者も、マスクと手袋をして農薬を撒くのは決して楽しくはないでしょうから。








