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天然素材で手作りだし

夕暮れの街角に漂う、だしやスープのいい香り。部活動帰りの空っぽのお腹には堪えられないものでした。そういえば最近、そんなことが少なくなってきたように思います。袋を開けてお湯を注げばすぐ出来るインスタントだしや、鍋にポンと放り込むだけのコンソメキューブ。一方、野菜や肉をコトコト煮込んで取っただしやスープ。出来あがりは同じように見えるけど、中身をよく見てみると...。今回は、だしとスープのあれこれをお届けします。 

出しを科学する

 そもそも"だし"って何?本をひもとくと、「鳥獣肉、およびその骨、魚介類、椎茸、昆布、生野菜などの旨味成分を抽出した汁」とあります。
 人は、主に舌と上あごの奥の軟口蓋(なんこうがい)で味を感じます。ここには"味蕾(みら

10_1.gifい)"という、味を感じるセンサーの役目をする細胞が多く集まっており、だしによって抽出された甘みやおいしさなどの旨味成分が付着することで、香りや奥深い味わいを感じる仕組みになっています。余談ですが、カゼをひいた時に味や香りをまったく感じなくなった経験はありませんか?これは、味蕾の部分が炎症に巻き込まれ、センサーが働かなくなってしまうためなのです。 

 昆布やカツオ、いりこなど、天然のだし素材には旨味成分がぎっしり詰まっています。昆布や野菜の旨味成分は、"グルタミン酸ナトリウム"、煮干しやカツオ節には潮の香りを彷彿とさせる"イノシン酸"、干しシイタケには山のひなびた味わいの"グアニル酸"、貝類は"コハク酸"といったものが含まれていて、それぞれの味や香りに大きく影響しています。
 単独では何となく物足りなく感じるかもしれませんが、2~3種類組み合せると、旨味が幾重にも重なり、えもいわれぬ風味やコクを生みだします。これが"旨味の相乗効果"。例えばグルタミン酸ナトリウム(昆布)+イノシン酸(カツオ節)を1対1の割合で配合すると、旨味は昆布だけの時の7.5倍に。また、グルタミン酸 ナトリウム(昆布)+グアニル酸(干しシイタケ)の1対1の配合は、昆布だけの時より30倍も増えます。
 昆布や野菜など、植物性の素材に含まれるグルタミン酸は、アミノ酸系の旨味です。一方、動物性のカツオ節や煮干しのイノシン酸と、干しシイタケに含まれるグアニル酸は、核酸系の旨味。素材は変わっても、基本的にアミノ酸系+核酸系、または動物性+植物性の組み合せが、相乗効果を生みおいしいだしをとるポイントになります。

うまみ調味料はいらない

さて、この旨味の相乗効果を人工的に作り出したのが、"うまみ調味料"といわれる、化学的に合成された薬品です。天然のだしや素材を使ったオーガニックな食生活をしていると、市販の物は何から何までうまみ調味料の味が強く、たくさん食べることができません。実際、市販の加工品メーカーや外食産業のほとんどは、人間の本能的な味覚である"甘味、塩味、うま味"の3つにターゲットを絞った味づくりをしているそうです。そのいきつくところが、ケーキを苦く感じるなどの「味覚異常」。原因はすでに発見済みで、ミネラルに含まれる微量元素の"亜鉛"の不足によるものです。同じものに見えても、そこに溶けだしている成分を見ると、化学的に作られただしを使ったものと、天然ものをじっくり煮出したものとでは、微量元素の存在が決定的な違いになるのです。
 亜鉛を特に多く含む食品を見てみると、カキ、イワシ、煮干し、麸、味噌(特に赤色辛味噌)、干しシイタケ、ワカメ、カンピョウ、切干し大根など、身近で素朴な、味噌汁や惣菜にピッタリの素材ばかりですね。

素材を上手に使った手作りだしのススメ

「だしをとるのって、最初から最後まで手間のかかることばかり。値段もばかにならないし...」そんな消費者の考えと、メーカーの戦略がマッチして、インスタントだしやコンソメキューブが

10_2.gifたくさん出回っています。でも、"だしをとる"ってそんなに難しいことでしょうか?天然のだし素材だって、簡単に使えるアイデアがたくさんあります。例えば、昆布や干しシイタケ。どちらも時間がある時に、空きビンに入れて水を注ぎ冷蔵庫で保存しておけば、いつでも使えるお手軽だしに。いりこは軽く炒って、カツオ節は袋ごと手でもみ、器に入れてお湯を注げば、だし汁に早変わり。自分に合った手造りだしのアレンジを考えるのも楽しいものです。
 料理番組やレシピの本には、だしの素やコンソメキューブが当たり前のように登場し、それを見て作る人も何の疑問も感じないで使う...でも、何か変です。"だし"は素材の持つ旨味そのものなんですから。旬の新鮮な素材を水に入れて煮込み、あとは『海の精』をほんのひとつまみ入れるなど、もう一段旨味を引き出す手伝いをするだけで充分です。だしの素やコンソメキューブを入れないと不安という方も、"今日からは、シンプルに素材の味を味わおう!"と心に誓ってトライしてみてください。その方が何倍もおいしいですよ。

さぁ、おいしいだしとスープで、香り高く充実した食生活を送りましょう!

 

参考/「自然流「だし」読本」船瀬俊介 著 

農山漁村文化協会 「「おいしさ」をつくる科学」稲神 馨 著 柴田書店


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