人口7人の小さな島から在来トウガラシが復活!~香川本鷹ものがたり
世界には様々な香辛料がありますが、日本独自の味わいである、〈一味〉や〈七味〉の原料や産地を辿ると、実は国産材料を使用しているものは、ほとんどありません。香川県の瀬戸内海に浮かぶ〈塩飽諸島〉に伝わる在来種のトウガラシ〈香川本鷹〉をつくった、正真正銘の和香辛料の奥深い風味をお楽しみください。
トウガラシ栽培に適した塩飽諸島
『にんじんCLUB』初登場となる〈香川本鷹〉を、つないでくれたのが『エス・エフ・スピリッツ』兼本さんです。現在、国内で流通するトウガラシの99%以上が輸入品、そのほとんどは中国産といわれています。「日本の伝統香辛料くらいは、自給率100%を目指したいと考えています」。心強い言葉とともに、お話いただきました。
「もともとトウガラシは、南米ボリビアあたりが原産といわれています。コロンブスによりスペインに移植された後、200年の間に世界中に広がりました。シルクロードを通じて朝鮮半島にも、早く伝わっているはずですが、両班)リャンバン)と呼ばれる貴族階級が薬として使っていたのみで、一般庶民に
は広がらなかったと考えられます。トウガラシがどのようにして日本に持ち込まれたのか色々な説がありますが、豊臣秀吉の水軍として有名な塩飽(しわく)水軍の船乗りが、東南アジアなど海外に足を延ばしていた際に、本拠地の塩飽諸島に持ち帰ったという説があります。また、秀吉の朝鮮出兵の際に塩飽諸島の水軍がトウガラシを持ち込んで、朝鮮半島に広がり現在のように真っ赤なキムチが作られるようになったともいわれています(韓国の文献にも掲載されているそう)。
トウガラシは順応性が大きい作物。最初は鹿児島から札幌まで、もともとは同じ品種がつくられ、やがて土地の気候や土が影響して違うものになっていくわけ。しかし、原産がボリビア中南米ですから、当然ながら雨が少なくて気温が高い、日本でいう香川県や四国が栽培に適しています。こうして広まった韓国の在来トウガラシと〈香川本鷹〉は、ほぼ同じDNAやろ、というてます」
幻の香川本鷹、復活へ
「もともとの出会いは、香川県の職員である糸川さんが書かれたホームページで〈香川本鷹〉を知って、これはおもしろいと思って香川県を訪ねたんです。かつては七味トウガラシの材料や、ピクルス用に欧州に輸出していた〈香川本鷹〉が、東南アジアなどからの安価な輸入品に押されて衰退。昭和50年代半ばで途絶えたと思われていました。しかし5年前、香川県三豊市で栽培されていたのをたまたま糸川さんが見つけ、種を保存していたんです。絶滅かと思われた、幻の〈香川本鷹〉の種を追って糸川さんと、話をして〈すごいなと、ほんなら復活させよやないか〉と。そこで香川県・丸亀市の職員、JA丸亀の職員と僕の4名で『香川本鷹復活プロジェクト』がスタートしました。」
「最初の反応は、『エス・エフ・スピリッツ』兼本と言っても誰も知らないし、地元の人自体が香川本鷹を知らなくて、〈え?何それ?〉とか〈そういえばおじいがそんなこと言うてたな〉と言われる始末。技術も伝承されてない、誰も作ったことがないという中で、かなりの方が尻込みされましたが、種持って手弁当で1軒1軒農家を説得して回りました。採れたトウガラシは全量買い取るという条件で掛け合ったところ、4世帯の方が、〈まあ失敗してもええやん、そんだけ言うんやったら島の特産品になるかもしれんな〉と言ってくれ、栽培が始まりました。
塩飽諸島は、もともと島自体が孤立している上に、小さい島は人口7人、大きくても300人、それが4つ5つ集まっている。そこから新しい県の特産品を作るというと、百姓がおもしろがりますよね。最初は〈土日潰してまで、あいつあほちゃうか?〉と言われていました(笑)。それが1年経ち、2年3年経って形になってくると、職員の方々もよく来るようになり、連日のようにマスコミも来て、そうなると島の方の顔色が変わってくるんですね。
観光に訪れる人もちょこちょこ増えたので、多少なりとも活気には貢献できているかなと思っています。百姓にとってもぜんぜん悪い話やないし、農薬もほとんど使わないですから」
行政・市民みんなの地元愛
「個人が取り組んでも限界がある。最終的に行政とやらないと村おこしにならないのです。行政を説得するのが一番大変でした。親身になってくれる地元の人を見つけることが肝心で、そういう人が見つかったら成功するんですよ。
〈香川本鷹〉が成功したのは、『香川本鷹復活プロジェクト』で皆さんが手弁当で回ってくれたのが一番大きいです。僕もほんまにこの方らに会うまでは、何が役所かと思っていましたが(笑)、違うんですね、行政とはこうあるべきと動く人が、中にはちゃんとおるんです。
それともうひとつは、県の産品です。普通マーケットをつくるというと都会に向きます。当然、都会の大きいマーケットに売らないと量がはけていかない。でも今回思ったのは地元愛、〈おらが産品〉みたいな意識が何よりも強い。こういう商品は、地元で売れないと生き残れない。〈自分達のもんや〉というのがないとだめです。今ちょっとずつ、地元のうどん屋さんとか、ちっさい問屋さん、道の駅でも〈香川本鷹を売らなあかんのじゃ~〉と完全ボランティアで回っています(笑)。
〈ええ商品あるでおいて~〉と動いてくれる地元のおばちゃんが結構おるんですよ。〈なんで大阪の業者、なんで地元とちゃうの〉と批判的な人もいましたが、4~5年やっとると、ちょっとずつ信頼されてきたんかなと思います。
昨年から、〈香川本鷹〉に加え、〈高野山唐辛子〉などの他の産地の栽培も始めています。目的のひとつは、トウガラシの栽培は楽で重量が軽く、収穫期のタイミングがゆるやかで、反収がいいので高齢者にも合っています。それでいろんな行政とタイアップしてあちこちに植えてもらう運動をやっています。当然、産地をつくっていく=うちは全量買い上げですから、普通のトウガラシメーカーとは違います。商品開発とマーケット拡大をしてかなあかんから難しいですが、おもろしろいですよ!」
本鷹一味 水分を10%以下にしないと粉砕できないので、トウガラシを天日乾燥させ、最終的に機械乾燥で10%以下に調整し、工場で粉砕、殺菌(熱殺菌100℃以下)して、最後袋詰めします。
スタッフ食べました!「唐辛子本来の辛味を楽しめるので、薄味の料理や白身魚のアクセントに振り掛ければ、減塩にもなりますよ!まさに〈ひとあじ〉一味」
本鷹七味 これが一番苦労しました。大葉を完全に乾燥させて粉末にさせるのに、値段の問題で何カ所も断られて。熊本にある仲原温室で、わざわざ小さい下葉を摘んで値段合わせてくれています。
スタッフ食べました! 「感動する香りのよさと深い辛旨味、このバランスが料理の引き立て役として新しい味を作ります。少しの辛味と風味づけが欲しい時にどんな料理にでもひとふりで大活躍!お漬物にしょうゆと七味をかけて、あつあつのご飯にのせてのりを巻いて食べたり、なにより味噌料理の隠し味に欠かせないです」
本鷹香油香川本鷹 本鷹香油香川本鷹を乾燥したホールの状態(粉砕はうちでやる)に、白ネギとショウガ、菜種油とごま油、最後に香辛料を入れて、3日間ほど寝かせ、ろ過紙しでこします。なんと『エス・エフ・スピリッツ』スタッフ浅田さんの手作りの逸品。
スタッフが食べました! 「一見、ラー油に似ているのですが、コクと旨味が格別です。中華料理全般、鍋にも相性抜群です。お好みでしょうゆや酢を加えてギョウザのたれに」
カラスコ おいしいリンゴ酢との出会いで生まれました。リンゴ酢は普通はリンゴジュースから作りますが、使用しているリンゴ酢は、リンゴの果肉から作っているからフレッシュでおいしいし、トウガラシも生です。鮮度がないと、独特の辛味はでません。
◆『エス・エフ・スピリッツ』兼本さんのおすすめの使い方
「お好み焼きです。ソースとも相性いいですし、特にマヨネーズとの相性が抜群!ぜひ試してください。あとは、お子さんのいる家庭の甘めカレーに、大人用『カラスコ』1本!辛さの調節ができる優れものです。ハヤシライスのトマト味とも相性がよいので、半分食べたら半分はカラスコをかけて違う味を楽しめますよ」
企画/エス・エフ・スピリッツ(大阪府堺市)








